無題

小言

アビガンの臨床試験について

https://www.fujita-hu.ac.jp/news/j93sdv0000006eya.html

https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCTs041190120

アビガンの臨床試験について藤田医大から最終報告のプレスリリース(7月10日)があったことは記憶に新しい。この試験について期待していたが内容はよく見ていなかった。介入試験というのは、ある患者群に、ある介入をした群と、介入をしない群(偽薬など)でアウトカム(予め決めておいた評価項目)を比較する。その結果が統計的な有意差を持っているかどうかなどを解析する。

 

デザイン:非盲検ランダム化臨床試験(多施設)

対象患者:PCRで診断された無症状又は軽症患者のCOVID-19

介入(通常投与群):Day1-10にファビピラビルを1日目1回1800 mgを2回,2日目以降1回800 mgを2回

比較(遅延投与群):Day 6-15にファビピラビルを1日目1回1800 mgを2回,2日目以降1回800 mgを2回

主要アウトカム:Day6までのSARS-CoV2ウイルス消失率

 

患者数:介入群44名、比較群45名。研究への参加時に既にウイルスが消失していたことが後日判明した19名を除外し通常投与群36名、遅延投与群33名で行った。

 

結果:「6日目まで(遅延投与群が内服を開始するまで)の累積ウイルス消失率」は介入群で66.7%、比較群で56.1%で統計的な有意差が見られなかった。

 

コメント:

 

期待していただけにがっかりした。試験結果ではなく、試験デザインに対して。しかもこの患者数の少なさ。論文として出るのだろうか。

 

そもそも対象患者が無症状または軽症患者って、そもそも彼らに対してなんのために薬を投与する必要があるのか。

主要アウトカムがDay6におけるウイルス消失率って、どう考えても臨床的に役立てることが難しい(似ても焼いても食えない)アウトカムをどうして持ってきたのか。

臨床では「ウイルスが検出できなくなること」がゴールではなく、患者の症状が早く回復し、死亡率を減らし、社会復帰できるようにするのが我々のゴールだ。

「ウイルス消失」という現象を捉えるにしても、RT-PCR自体の感度の問題も考慮すべきだろう。小生も実際COVID−19の患者を退院させる時に必要な陰性確認のPCR(今はやっていない)で1回目陰性、2回目陽性なんて経験何度もあった。Day6におけるウイルス消失というのはさすがに2回PCR陰性確認はしているのだろうか。

軽症患者という患者群であれば、症状が消失するまでの期間や、臨床的なスコアの低下までの期間をアウトカムとすべきだろう。

 

結局、無症状や軽症患者を対象にして、ウイルス消失率なんていう、測定が容易で、いかにも有意差が出しやすそうな代理エンドポイントを採用しても、患者数が少なすぎて有意差が出なかった。

 

アビガンが効くかどうかという疑問に答えるものではなく、どう贔屓目に見ても、臨床に役立てるために行った試験とは思えない。

薬屋が承認を受けることが目的であって、最初から良い結果が出ることを前提に始めたものだろうと推測する。

だったらしっかり患者数を確保してやるべきだった。こんな杜撰な試験でアビガンを葬り去って良いのか。

 

結論:この試験ではアビガンは患者にとって有用かという疑問に答えられない。