無題

小言

ロハはヒトをダメにする

1年前から看護学校の授業を担当している。90分の講義を2回行う。

毎回授業前になると、別室に連れて来られて、これから授業をやるということで書類にサインをする。授業の準備のためにはかなりの時間を費やしている。

 

内分泌疾患についての話が担当なので、ホメオスターシスや生理学の話をするために、ウォルターキャノンの「体の知恵」を読んだり、英語の分厚い教科書を読み込んだ上でスライドを作る。こちらが、講義内容を面白いと思わないと、相手も面白いと思わないだろう。

さんざん準備を重ねて、スライド60枚を超える資料も作って、実際に講義を行うと、悲しいぐらい反応に乏しい。一番前の席の生徒が私の話を聞いてうなづいてくれるのが救いだ。

質問してもシーンとして何一つ返ってこない。名簿を見て、名指しして質問しても、わからないという。去年も同じだったので、こんなもんかと思った。

 

授業が終わった後に、ある生徒に話しかけてみた。みんな教科書はどうしているのか。

みんな教科書が電子化しており、タブレットを持参して、机においたタブレットを見ながら聞いている。これには驚いた。

教科書を電子化しちゃって大丈夫かと思った。個人的な経験だと、電子ドキュメントは本と比べて格段に頭に入ってこない。

試験問題も作る。責任重大なので練りに練って作る。国家試験問題も参考にしながら作る。

 

明後日に2回目の講義があるので、資料を本日までに作り上げた。

電話で取りに来るように伝えるが、取りに行きますと言ったきり取りに来ない。催促の電話をしたら、ようやく取りに来た。不思議なことに相手は名乗らない。これまでずっと聞けずにいたが、思い切って聞いてみた、この講義っていくらぐらいお金出るんですか?

「ここの病院の先生だと、お金は出ません。すみません」以上。

 

確かに講義を担当すること自体が勉強になるとは思うので、キザな言い方をすれば、それが一番の報酬と言えるかもしれない。が、ロボット相手に話しているみたいで、手応えはほぼなく、みんなマスクをしていて、下を向いていて、表情もわかりにくい。終わった後に疲れて、もう来年はやめようという気持ちになる。

医学生相手ならば私はロハでも良いと思うが、が、やはり親しくもない相手(外部の人間)にロハで仕事を頼むのはダメだと思う。せめてロハであることを事前に相手に伝えるべきだと思う。1000円でも2000円でも良いから払うべきだと思う。

 

巨人症(gigantism)という病気がある。イメージしてもらうために、その病気の有名人の例として、ジャイアント馬場の写真を出して彼がどういう症状が出たのかを解説した上で、この方は誰でしょう。と懸賞クイズを出してみた。で、答えてくれた人にはジャイアントカプリコをあげようと、粋な景品を用意しておいた。が、ヒントをあげても誰も答えようとすらしてくれなかった。そして驚いたことに、誰もジャイアント馬場を知らなかった。

ジャイアントカプリコは妻にあげた。