無題

小言

コロナが明るみにしたもの

「もうアホみたいだ。」というのが率直な感想である。

私は内科医をしている。コロナを診断し、受け持っている。救急車を受け入れたり、一般的な診療も並行している。が、仕事がやりにくくて仕方がない。その根本原因は人間関係の希薄化にあると思う。

以下に一例を紹介する。

 

発熱で来院した患者。右下腹部に圧痛あり。CTをとると虫垂が穿孔しており、虫垂の周りに5cm大の膿瘍ができている。虫垂炎の穿孔だ。手術適応につき外科に相談。

曰く「CTをみた(患者ではない)。今すぐ緊急手術は必要はない。コロナを完全否定してほしい。そのあとであれば外科が受け持つことを検討しても良い。おそらく抗菌薬だけでなんとかなるので内科で治療するように。」

 

整形外科が他院から受け入れた大腿骨頚部骨折で救急搬送されてきた患者。入院と早期の手術が必要である。

曰く「体温が38℃もある。骨折は急がないので、まずはコロナを否定してほしい。その上で、手術を考えても良い。否定できるまで内科で受け持ってほしい。」

(骨折だけでも熱がでる。今この骨折の内科受け持ちが増えてきて困っている。)

 

吐血後の心肺停止で救急搬送された患者。外科で大手術後でまだ退院してまもない。手術との関連が疑われるため自己心拍再開後に外科に相談。外科医は見にこない。

曰く「まず内科でコロナを否定してから、こちらで見るかどうか外科の中で検討する。」

 

当直中のDrコール。入院患者から腰痛があるため診察依頼。陰圧室で隔離されている。側臥位で腰を痛がっている。

曰く「腰痛で入院したのに、コロナを調べると言われたきりで、こうして痛みを耐えて我慢している。まだ、診察もしてもらっていないし、痛み止めも使ってくれない。」

 

私はコロナにかかることをそれほど恐れていない。堪え難いのは我々医療者が猫も杓子もコロナコロナと念仏のように唱え、自分の本来すべき仕事を放棄して、他人に責任を押し付けることである。コロナの可能性が「ゼロとは言えない」「否定できない」が、彼らの逃げ口上である。

 

残念ながら、当院では、コロナに対して医療者どうしが助け合うといった良い流れは生まれていない。コロナを実際にみている医者・看護師間の連携はまあできていると思う。

が、当院では我関せずの医者が多くて困る。

ちなみに当院にダイアモンドプリンセスの受け入れに最も反対したのは整形外科医である。病院全職員にアナウンスすべきだとかアホなことをいっていた。

そういえば、3.11の大震災の時も知らん顔で真っ先に帰った医者と、病院の非常時の救急対応で遅くまで残った医者にわかれた。(さいわい後者が多かった)

もともと、医療者間の人間関係が希薄化しているところに、コロナが入ってきてさらに希薄化したと感じる。摩擦すら生まれない。摩擦を極端に避けている。

我々内科医も頑張っているが、相手の言う通りするという卑劣さに陥りがちである。上記の例をあげたがそれに対して抵抗していない。ここにも摩擦を避けるという防御反応が働いている。

 人間関係の希薄化、そしてそれに乗っかる形での無責任、卑劣さ、それが目に余る。コロナのせいではない。コロナが明るみにしただけである。

この流れに抗する必要がある。