リモート
対象から離れれば離れるほどいい加減になり、非情になれる。
リモートの負の側面について述べたい。
オンライン診療なるものが出て来ており、小生もやっているのだが、結構それで誤診をすることがある。
例えば、「発熱+息苦しさ」という症状だったとすると、状態が悪くなければ、コロナの可能性ありと判断され、感染対策として、患者は別のブースに移動させられ、直接診察せずに画面越しの診察というシステムを採用している。
こんなことがあった。ある患者さんは「発熱+息苦しさ」のためもう当院を3回ぐらい受診しているが、熱があるため直接診察してもらえない。とりあえずコロナを調べましょう。コロナは陰性だった。
3回目に来た時に、担当した医者が画面越しに見て歩き方がおかしいのに気が付いて、直接の診察に切り替えたところすぐに診断がついた。虫垂が穿孔しており膿瘍形成していた。こういった例は他にもある。
話は変わるが、当院は救急隊や他の病院から患者の転送の要請があるが、最初に事務さんが当番の医者に取り継ぐ形で救急要請がくる。直接救急隊から患者の話を聞くと、酔っ払いでも自殺企図でもよほどの理由がない限り断れないものだ。
救急隊や他の病院からの電話は、本当は医者が直接出なければならないのだが、それをやらずに最初から事務さんに断らせる医者が散見される。この医者は何も後ろめたさを感じることなく、患者を断ることができる。
電子カルテ、メールいろいろな道具が出て来て相手と直接対面や会話をせずに事を済ませることが可能になった。時間や労力の節約という点で便利である。が、何かを得るということは何かのマイナスと抱き合わせである。
我々は、対象や相手から遠ざかれば遠ざかるほどいい加減になり、無責任な対応ができて、非情になる事さえもできる。
僕も匿名で、こうして愚痴っているのだから同じ穴のムジナである。
それが悪いというのではなく、そもそも人間はそういうものだということが、最近になって身にしみて感じる。